内分泌内科(甲状腺)

甲状腺の病気は特に女性にとって決してめずらしいものではありません。
甲状腺に関わるご不安がございましたら何でもご相談下さい。

甲状腺とは

甲状腺は頸の前側、喉仏(甲状軟骨)のすぐ下のところにあります。ちょうど蝶が羽を広げたような形です。(当院のシンボルマークも、甲状腺の形を取り入れています。)
甲状腺ホルモン(T3、T4)を生合成し血液中に放出(分泌)する働きをしています。

甲状腺ホルモンは、小児の成長、発育に欠かせないものです。成人でも、新陳代謝の調節に重要な役割を果たしています。

甲状腺ホルモンの分泌が過剰な状態を甲状腺機能亢進症と呼びます。
動悸、暑がり、汗をかきやすくなる、手が震える、体重減少、集中力低下などの症状を起こします。

逆に、甲状腺ホルモンが不足している状態を甲状腺機能低下症と呼びます。
むくみ(体重増加)、気力低下、血中コレステロール値の増加、脈が遅くなる、便秘、皮膚の乾燥などの症状を起こします。
高齢者では、認知症と間違われることもあります。

当院では、甲状腺ホルモンの検査を院内でも行っており、1時間ほどお待ちいただければ、当日に検査結果をお伝えできます。

治療内容

バセドウ病

甲状腺機能亢進症を起こす病気の中で、一番多く有名なのがバセドウ病です。
甲状腺が全体的に大きく腫れる(びまん性腫大)ことが多く、同時に甲状腺ホルモン過剰による症状が出現します。
眼球突出が見られることもあります(バセドウ眼症)。

バセドウ病の診断は、多くの場合血液検査のみで可能です。血液中の甲状腺ホルモンが高く、抗TSHレセプター抗体という検査が陽性であれば、診断できます。

治療は、9割は内服薬で行われており、通院での治療が可能です。
ただし、最初だけは薬の副作用チェックのため、2週間に一回の通院が必要になります。内服薬が副作用で使用できない場合は、手術療法(甲状腺亜全摘術)か、放射線療法が必要になります。
その場合は、可能な病院へご紹介します。

亜急性甲状腺炎

普通の風邪のような症状に引き続いて、発熱(38度以上のことも、微熱のことも)と、首の前側の痛みが継続し、市販の風邪薬や抗生物質を内服してもよくならない場合は、この病気かもしれません。

何らかのウイルスの感染をきっかけに、甲状腺に炎症が起こり、全身の発熱と甲状腺の痛みを伴う腫れをきたします。
甲状腺の、ホルモンを含む細胞が壊れて血液中にホルモンが多量に放出されるので、この病気でも甲状腺機能亢進症になります。

治療は多くの場合ステロイドで行います。発熱や痛みはすぐ改善しますが、薬を徐々に減量しないとぶり返すので、数ヶ月の通院が必要になります。

橋本病

甲状腺に自己免疫の機序により慢性炎症が起こる病気で、慢性甲状腺炎とも呼ばれています。
橋本病では、炎症のために甲状腺が腫れて大きく、硬くなります。

また、進行すると十分な甲状腺ホルモンが合成することができなくなり、甲状腺機能低下症の症状が起こってきます。
診断は、触診あるいはエコー検査と、血液検査(抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺マイクロゾーム抗体)で行います。

女性では珍しい病気ではなく、疑い例を含めると成人女性の30人に一人が橋本病であるとの調査結果もあります。
そのうち8割以上の方は、甲状腺ホルモンは正常といわれており、治療の必要はありません。

ただ、炎症の進行により甲状腺ホルモンが徐々に不足してくる可能性があること、甲状腺腫瘍を合併しやすいことから、1、2年に一回の受診(甲状腺ホルモンの検査、エコー)をお勧めします。

また、橋本病と診断された方は、ヨードの摂りすぎで甲状腺ホルモン不足に陥ることがあるので注意してください。
甲状腺機能低下症になってしまった場合は、甲状腺ホルモンの製剤(チラージンS)を継続的に服用し、不足分を補う必要があります(補充療法)。

甲状腺腫瘍

最近では、人間ドックで甲状腺エコーが行われたり、動脈硬化の検査の一つである頸動脈エコーが普及したりして、触ってもわからないような小さな甲状腺の腫瘤(結節といいます)やのう胞を発見されることが多くなりました。

検診目的で甲状腺エコーをした場合、約半数の方にのう胞(中に液体が入った袋状のもの)が発見されるといわれています。
数mmの小さなものに関しては、経過観察のみで十分です。2cm以上ののう胞では、細い針をさして中の液体や細胞を採取し、検査をします(穿刺吸引細胞診)。

腫瘤(結節)が発見された場合でも、そのほとんどは腺腫様結節または濾胞腺腫と呼ばれる良性のものですが、中には悪性腫瘍の場合もありますので、エコー所見で疑わしい場合は、穿刺吸引細胞診を行います。
その結果、悪性が疑われる場合はすみやかに専門施設(藤田保健衛生大学病院)にご紹介いたします。

妊娠と甲状腺

甲状腺の病気は女性に多いため、甲状腺疾患で治療中の方が妊娠を希望されるケースはよくあります。
バセドウ病にしても橋本病にしても、治療で血中の甲状腺ホルモンが正常化していれば、妊娠出産は可能です。

甲状腺ホルモン過剰状態でも不足状態でも、流産、早産、妊娠高血圧症候群などのリスクを伴いますので、もし妊娠後に甲状腺疾患の存在が判明した場合は、できるだけすみやかに甲状腺ホルモンを正常化させることが必要です。

不妊と、ごく軽度の甲状腺機能低下症(潜在性甲状腺機能低下症)との関連が報告されてから、婦人科で甲状腺の検査をされ、甲状腺ホルモン製剤を処方される方が増えています。
不妊治療中と妊娠中は、一般的な甲状腺機能低下症の方とは違う基準で薬の処方量を決めます。詳細は直接ご相談ください。